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技術紹介

Technology

技術紹介

Overview

まずは、
グルタチオンを作る

最初の市場は農業です。

WAKUの研究の中心にあるのが分裂酵母です。グルタチオンを効率的に作るために得た知見は、次の分子を開発するときにも活用できます。

01 Glutathione

グルタチオンとは

WAKUにとっての、最初の分子。

グルタチオンは、グルタミン酸・システイン・グリシンの3つのアミノ酸からなる物質です。還元型(GSH)と、2分子が結びついた酸化型(GSSG)の2種類が存在し、細胞を酸化ストレスから守る働きがあります。

人、動物、植物、酵母など、さまざまな生物にもともと存在している物質で、医薬品やサプリメント、美容液などに使われ、約60年にわたる産業実装の歴史があります。

WAKUは、まだ用途の分からない分子をゼロから探すのではなく、科学的な蓄積がありながら十分に事業化されていなかった領域から社会実装を始めています。

植物における、4つの働き

光合成

Photosynthesis

光合成のカルビン回路で働く葉緑体の酵素アルドラーゼ(FBA1)は、グルタチオンが結合する標的として見つかりました。葉緑体のアルドラーゼを増やしたタバコでは、光合成と生育が高まりました。

参考論文

Ito H, Iwabuchi M, Ogawa K (2003) Plant Cell Physiol 44: 655–660

Uematsu K et al. (2012) J Exp Bot 63: 3001–3009

環境ストレスへの応答

Stress Response

グルタチオン合成の鍵となる遺伝子GSH1を強く働かせ、体内のグルタチオンを増やした植物は、乾燥や塩のストレスに強くなりました。このとき、植物ホルモン(アブシシン酸など)やストレス応答に関わる遺伝子群の働き(翻訳)が高まっていました。

参考論文

Cheng MC et al. (2015) Plant J 83: 926–939

根の形成

Root Development

根の先端で細胞分裂を続けるにはグルタチオンが必要です。グルタチオンが不足すると、植物ホルモン「オーキシン」を運ぶ輸送体(PIN)が根の先端から失われ、オーキシンの集まりが消えて、根の伸長が止まります。

参考論文

Vernoux T et al. (2000) Plant Cell 12: 97–110

Koprivova A et al. (2010) Plant Cell Rep 29: 1157–1167

Bashandy T et al. (2010) Plant Cell 22: 376–391

栄養吸収

Nutrient Uptake

リン酸が足りないとき、根は根毛を伸ばして吸収する面積を広げます。この応答にはグルタチオンが必要です。鉄が不足したときに鉄の取り込みに働く遺伝子を誘導するのにもグルタチオンが欠かせず、グルタチオンを増やした植物は鉄欠乏に強くなりました。

参考論文

Trujillo-Hernandez JA et al. (2020) J Exp Bot 71: 4843–4857

Shanmugam V et al. (2015) Plant J 84: 464–477

Koen E et al. (2012) Plant Signal Behav 7: 1246–1250

02 Fission Yeast

分裂酵母とは何者?

同じ「酵母」でも、
形も増え方も、大きく違います。

出芽酵母

丸い・楕円形。親細胞から小さな芽が出て増えます。

産業界で長年使われている酵母。パンやビール、タンパク質の合成に。

パン

ビール

タンパク質合成

分裂酵母

棒状。中央に仕切りをつくり、二等分に分かれて増えます。

アカデミアのモデル生物としての酵母。細胞周期や遺伝学など、生命科学の研究に。

細胞周期

遺伝学

研究では世界的に知られているのに、
産業ではほとんど使われていない。

分裂酵母は、出芽酵母とは異なる進化をたどってきた酵母です。人間と同じ真核生物でありながら、たった一つの細胞で生きるシンプルさから、細胞分裂や遺伝子の働きを解き明かす「モデル生物」として世界中で使われてきました。

一方で、産業の主役は長く出芽酵母でした。だからこそ分裂酵母には、まだ十分に使われていない遺伝子や代謝機能が数多く残されています。このギャップに、WAKUは着目しています。

03 History

なぜ、分裂酵母は
世界中で研究されてきたのか?

分裂酵母から、人間にも共通する
生命の仕組みが発見されました。

01

分裂酵母

シンプルながら多くのことが分かる優れたモデル生物

02

cdc2の発見

細胞分裂のタイミングを決める遺伝子発見

03

細胞周期の制御

細胞はいつから分かれるのかの解明に

04

人にも共通

この仕組みはヒトを含む真核生物に共通

05

2001年、
ノーベル生理学・医学賞

ポール・ナースは分裂酵母を用いた研究でcdc2を解明

1970年代、英国の研究者ポール・ナースは、分裂酵母を使って「細胞は、いつ分裂を始めるのか」という生命の基本的な問いに挑みました。分裂酵母は一つの細胞だけで生きるシンプルな生物ですが、細胞の中には核があり、人間と同じ「真核生物」です。そのため、複雑な生命現象を一つの細胞というシンプルな環境で観察できる、優れたモデル生物として世界中で研究されてきました。

その研究から発見されたのが、「cdc2」と呼ばれるサイクリン依存性キナーゼ(Cdk)遺伝子です。cdc2は、細胞が成長し、DNAを複製し、適切なタイミングで二つに分裂する「細胞周期」を制御する重要な遺伝子でした。さらに研究が進むと、同じ仕組みが分裂酵母だけの特殊なものではなく、人間を含む多くの真核生物に共通していることが明らかになります。小さな酵母を研究することで、人間の細胞がどのように増殖しているのかという普遍的な生命のルールが見えてきたのです。

こうした細胞周期研究への功績により、ポール・ナースはリーランド・ハートウェル、ティム・ハントとともに2001年のノーベル生理学・医学賞を受賞しました。細胞周期は、発生や組織の成長だけでなく、Cdkによるチェックポイント制御を失った細胞が増殖する「がん」を理解するうえでも重要な生命現象です。分裂酵母は、目立たない小さな微生物でありながら、現代の生命科学の発展を支えてきた、世界を代表するモデル生物の一つなのです。

04 Why Fission Yeast

WAKUは、なぜ
分裂酵母を使うのか?

モデル生物だった分裂酵母で、
バイオものづくりを。

出芽酵母

GSH1

→

GSH2

→

グルタチオン

分裂酵母

gcs1 + gcs2

→

gsa1

→

グルタチオン

→

pcs2

→

ファイトケラチン

分裂酵母を蛍光顕微鏡で見た様子(青色:核、緑色:GFPタンパク質)

WAKUが注目しているのは、分裂酵母がもともと持つ、特徴的な代謝の仕組みです。図にあるGSH1、GSH2、gcs1、gcs2、gsa1、pcs2は、いずれも細胞の中で分子をつくるはたらきに関わる「遺伝子」の名前です。出芽酵母では、GSH1、GSH2という遺伝子のはたらきによって、抗酸化物質であるグルタチオンがつくられます。一方、分裂酵母では、グルタチオンを合成する遺伝子に加えて、その先の分子づくりに関わる遺伝子も備わっています。

たとえばpcs2は、グルタチオンを材料として、重金属の解毒に関わるファイトケラチンをつくる遺伝子です。つまり、出芽酵母ではグルタチオンが主な到達点であるのに対し、分裂酵母ではグルタチオンを出発点として、その先の機能性分子まで生み出せる可能性があります。WAKUはこの特性に着目し、分裂酵母を、グルタチオン生産にとどまらない「バイオものづくり」の基盤としています。

01

最初の分子

グルタチオン

最初のターゲット分子。分裂酵母で効率よく生産し、農業から、さまざまな産業の原料へ。

02

その先の分子

機能性分子

例:超硫黄分子

グルタチオンに関連する機能性分子。硫黄原子が鎖のように連なった「超硫黄分子」など、高付加価値分子へと対象を広げます。

03

新たな用途

重金属浄化

分裂酵母による重金属の硫化・酸化。グルタチオンからつくられるファイトケラチンなど、硫黄を持つ分子が重金属を捉えます。

05 Our Story

WAKUの創業に
至るまで。

グルタチオンと分裂酵母の研究蓄積から。

国の大型研究プロジェクト、アカデミア、大企業で積み重ねられてきた二つの研究の系譜がWAKUで交わり、新しいバイオものづくりへと進み始めています。

グルタチオン研究の系譜

植物とグルタチオン

岡山県生物科学研究所で、植物が環境の変化に応答し、光合成や成長を制御する仕組みを分子レベルで研究。グルタチオンが植物の生命活動に重要な役割を果たすことを明らかにしてきた。

JST「CREST」採択

岡山県生物科学研究所の研究が、科学技術振興機構(JST)の大型研究プログラム「CREST」に採択。グルタチオンによるCO₂固定や、植物生産性向上のメカニズムを研究。

ENEOSとの共同研究

新たな事業領域として植物工場を検討していたENEOSが、グルタチオンの農業応用に着目し、岡山県生物科学研究所と共同研究を開始。アカデミアの研究成果を、実用技術へ変える研究が進められた。

WAKU設立

ENEOSでグルタチオンの研究と事業化に取り組んできたメンバーが独立。2022年、その社会実装を担う会社としてWAKUを設立。

分裂酵母研究の系譜

酵母の研究者として

主席研究員の高畑信也は、大学時代から酵母を研究。博士号取得後は、米国ユタ大学の博士研究員として海外での研究経験を積む。

北海道大学で20年

高畑は北海道大学で助教・特任講師を歴任。約20年にわたり分裂酵母をモデルに、遺伝子発現を制御するクロマチンの高次構造など、生命現象の根幹に関わる研究を進め、国際学術誌に多数の論文を発表。

グルタチオン代謝に着目

分裂酵母を研究する中で、高畑はグルタチオン代謝との関係にも着目。WAKUが積み重ねてきたグルタチオン研究との接点を見いだす。

WAKUに参画

「分裂酵母なら、グルタチオンを効率的につくる新しい生産基盤になり得る」という確信のもと、2025年9月、高畑がWAKUの研究開発に参画。

「植物×グルタチオン」の研究と、「分裂酵母」の研究が、一つの会社の中で交わりました。

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