一般コラム
WAKUインターン生の春休み:WAKUの最前線に飛び込む



こんにちは。WAKUインターン生の下口慶夏(しもぐち よしか)です。
先日、WAKU本社で行われたUNIDO報告会とWAKU大学(※)に参加しました。
この一日を通して、私の中で大きく変わったことがあります。
それは、私はこれまで「技術そのもの」がいちばん大事なのだと思っていたけれど、実際には、その技術を社会に届く形へつないでいく工程や役割まで含めて、初めて価値になるのだと実感したことです。
研究の報告を聞き、議論に同席し、講義を受ける中で見えてきたのは、社会実装が知識の地道な「点つなぎ」の連続だということでした。今回は、そんな一日の中で私が見たこと、感じたことを書いてみたいと思います。
(※WAKUとその研究分野への興味を思う存分学べる、WAKUの研究員の方や、連携機関の先生方によるプチ学会&講義の場です)
いざ、最前線へ
この日は、会議室のような空間に皆で集まり、それぞれ自己紹介をするところから始まりました。参加されていたのは、CTOの三橋さん、研究員の高畑さんと松江さんと柴田さん、東京農業大学の中村先生、そして私です。
会場には、高畑さんが飲み物やお菓子まで用意してくださっていて、集中しつつも居心地のよい空間が整えられていました。「まるで学会だね」と三橋さんが言われていたので、少し驚きました。私は勝手に、学会はもっと張りつめた雰囲気の議論の場だと思っていたのです。私はこの日をきっかけに、研究者がたくさん集まる大規模な学会にも興味を持つようになりました。
最初の時間には、WAKUの近況や福島プロジェクトについてのお話がありました。特に印象に残ったのは、WAKUが成長をさらに加速させるために南相馬市への移転を進めているという話です。南相馬市には多くのスタートアップ企業が集まり、ドローン技術の開発企業だけでも100社以上あると聞き、日本の技術開発が盛んな場所を自分でも回ってみたくなりました。CEOの姫野さんが南相馬市とつながったきっかけが、イベントでの偶然の出会いだったという話からも、人と人との縁が新しい動きを生むのだと感じました。
研究報告に食らいつく
午前のUNIDO報告会第一部では、東京農大の中村先生による研究報告が行われました。内容は、高濃度の金属との反応を試す研究についてです。
正直に言うと、この時間はついていくのに必死でした…。計測結果のグラフ、つまり「生データ」を見ても、最初は何がどう示されているのかほとんど分かりませんでした。ですが、分からないなりにも、分かるところだけでも拾おうとメモを取り、後から質問して少しずつ自分なりの解釈を深めていきました。
その中で、特に印象に残ったやり取りがあります。研究を進めていくと、次に進むべき選択肢がいくつも分かれていくそうです。時間も資金も限られている中で、ではどうやって次にやる実験を選ぶのか。私はそのことが気になって中村先生に質問してみました。
返ってきた答えは、思ったよりずっとシンプルでした。
「おもしろいかどうか、だよ」
その言葉を聞いたとき、私は「あ、そうなんだ」と思いました。もっと複雑で、もっと厳密な判断基準が返ってくるのかと思っていたからです。もちろん実際には、研究には予算や時間、目的との整合性もあるはずです。でも、その中でも最後に研究者を前に進ませるものとして「おもしろいかどうか」があるのだと知って、なんだかとてもいいなと思いました。
自然の力を科学する
午後の第二部では、高畑さんの報告と討論が行われました。ここで私が特に惹かれたのは、植物がもともと持っている「有害な物質を無毒化する力」を、科学の力で解釈し、再現性のある形にして社会課題の解決につなげようとしている点です。
「植物ってすごい」で終わるのではなく、その仕組みを人が理解し、再現できる形にしていくことに大きな面白さを感じました。自然の中にある現象を、社会で使える技術へと読み替えていく。その流れそのものに、私はワクワクしました。
また、後のWAKU大学の講義内で扱われた内容ともつながるのですが、多細胞生物のメカニズムを一つの細胞で扱うことへの違和感、という切り口も印象に残りました。私は、ただ「新しい知識を知る」だけでなく、「そもそもその見方は自然なのか」と問い直す視点があることにハッとしました。研究は、答えを積み上げるだけではなく、問い方そのものを見直しながら進んでいくのだと感じました。
技術と社会をつなぐ
私の認識が大きく変わったのは、WAKU大学の後半、松江さんのお話を聞いたときでした。
それまでの私は、すごい技術さえあれば、それが一番大事な要素なのだと思っていました。ですが、松江さんのお話を通して、技術はそれだけでは社会に届かないのだと分かりました。
WAKUの中には、「経理・人事・総務・法務」「営業」「製造」「研究開発」といった役割があり、研究開発の中でも、研究そのものを深める役割と、それを具体的な社会実装へつなぐ役割とがあるそうです。松江さんは、どちらかといえば製造に近い立場で、品質管理や製造工程の検証、保存安定性の評価などを担っているとのことでした。
たとえば、液体クロマトグラフィを用いた品質チェック。滅菌濾過の工程。タンクで運ばれてきた液体肥料をボトルに移す作業。保存安定性の評価。どれも一見すると派手ではありません。でも、そうした工程がなければ、実験室でできたものを社会に届けることはできません。
松江さんの「いいものを世に出すのは、持っている色々な知識の組み合わせで初めてできる」という言葉が心に残っています。技術と社会の間には橋が必要で、その橋を支えるのは、こうした地道な知識と工程の積み重ねなのだと感じました。
私はこの話を聞いて、チームとはいろいろな役割によって回っていて、どの役割もかっこいいのだと思うようになりました。技術そのものにフォーカスするだけではなく、それを社会にどう展開するかという視点を持てたことは、自分にとって大きな前進でした。
着地点の探り方を知る
夕方の第三部では、UNIDOプロジェクト終了に向けた進め方について議論が行われました。ここまでで約6か月活動してきて、残りはあと2か月。時間も予算も限られている中で、プロジェクトとしてどこに着地させるのかを考える時間でした。
この議論で印象的だったのは、用語や研究内容について何度も丁寧に擦り合わせが行われていたことです。方向性を共有しているように見えても、細かい認識のずれがあると、最終的な成果の形も変わってしまう。そのため、言葉の意味や実験の意図を確認しながら、一歩ずつ落とし所を探っていく様子がとても現実的でした。
また、話の中で出てきた「XAFS分析」という分析が、一回行うだけで数十万円かかると知って驚きました。研究の現場では、ただ「面白そうだからやってみる」だけではなく、その一回にどれだけのコストがかかるのかまで踏まえて判断しなければならないのです。どの実験を、なぜ今やるのか。これまでの結果と、これから見たいことをどうつなげるのか。その意図を持つことの大切さを、改めて感じました。
研究と社会実装は、地道な点つなぎ
この一日を通して、私の中で研究や社会実装の見え方が変わりました。
WAKUで私が見たのは、まさにその地道な「点つなぎ」を本気で行っている人たちの姿でした。研究の最前線の面白さも、社会へ届けるための粘り強さも、どちらも同じくらい大切にされている。そのことが、とても印象に残っています。
今回得た学びを胸に、これからも探究を続けていきます。
WAKUの皆さん、そして中村先生、素敵なお時間と経験をありがとうございました!!
この記事を書いた人
Yoshika Shimoguchi
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