2026.10.13

一般コラム

長雨・日照不足で野菜が育たない原因と対策|過湿・根の酸欠・光合成低下を防ぐポイント

雨や曇りの日が続くと、野菜の生育が止まる、葉色が悪くなる、徒長する、根張りが弱くなる、花や果実が落ちる――といった変化が見られることがあります。
長雨で問題になるのは、単なる「日照不足」だけではありません。

地上部では光不足によって光合成が低下し、地下部では過湿によって根域の酸素が不足する。
この二つが同時に起こることで、植物全体の生育が不安定になりやすくなります。

実際、2026年9月には農林水産省が、長雨・日照不足によるハクサイやキャベツの生育不良、ナス・トマト・ピーマンでの着果数減少や果実肥大の遅れなどを報告しています。


長雨・日照不足が続くと、野菜にどんな症状が出る?

日照不足や過湿が続くと、作物や生育段階によって違いはありますが、次のような変化が起こることがあります。

  • 生育が遅くなる、止まる

  • 茎葉が徒長する

  • 葉色が悪くなる

  • 根張りが弱くなる

  • 株ごとの生育差が大きくなる

  • 花や幼果が落ちる

  • 着果数が減る

  • 果実肥大や着色が遅れる

重要なのは、これらを一つの原因だけで説明しないことです。

長雨時には、光・水分・酸素・温度・湿度など複数の環境条件が同時に変化します。


日照不足で光合成が低下すると、なぜ生育が止まる?

植物は光エネルギーを使って光合成を行い、CO₂から糖などの炭素化合物をつくります。
低日照では利用できる光エネルギーが少なくなるため、光合成による炭素同化量が低下しやすくなります。低光量条件では、根・茎・葉の乾物生産や植物全体の生育が制限されることも知られています。

その結果、

 日照不足
 ↓
 光合成による炭素同化量が低下
 ↓
 生育に使える糖などの炭素資源が少なくなる
 ↓
 新葉・根・花・果実などへの資源配分が制限される

という流れが起こります。

トマトでも、炭素同化が少ない条件では植物体内の炭水化物蓄積量が低くなり、その後の暗条件で呼吸や生育に利用できる炭素資源が早く不足することが報告されています。

つまり、「光合成が少し落ちる」だけではなく、植物全体のエネルギー・炭素収支に影響することがポイントです。


長雨・過湿では、根も「酸欠」になりやすい

長雨時にもう一つ注意したいのが、根域の低酸素状態(hypoxia)です。

土壌の空隙が水で満たされると、空気を通じた酸素供給が大きく制限されます。
植物の根も呼吸によってエネルギーをつくっているため、酸素が不足すると好気呼吸が制限され、ATP産生が低下します。

その結果、

 過湿
 ↓
 根域の酸素不足
 ↓
 根呼吸・エネルギー産生が制限
 ↓
 根の生育・機能が低下
 ↓
 水分・養分獲得が不安定になる

という変化が起こります。

水が十分にあるにもかかわらず、植物が萎れたり生育が止まったりすることがあるのは、このためです。

水分不足だけでなく、水が多すぎても根は正常に働けなくなることがあります。


長雨は「光不足+根の酸欠」のダブルパンチ

長雨時の生育不良を理解するうえで、ここが一番重要です。

葉では

 日照不足
 ↓
 光合成低下
 ↓
 炭素供給の減少

一方、根では

 過湿
 ↓
 酸素不足
 ↓
 根呼吸・エネルギー産生低下
 ↓
 水分・養分獲得の低下

が同時に起こる可能性があります。

さらに、根の機能が低下すると気孔閉鎖や地上部の光合成低下につながることもあり、地上部と地下部の問題は独立しているわけではありません。

つまり長雨は、

 「葉が光を受けられない」
 +
 「根が十分に呼吸できない」

という複合ストレスとして見る必要があります。


長雨・曇天時にまず見直したい栽培管理

まず優先すべきなのは、植物が置かれている環境そのものを整えることです。

農林水産省も、低温・長雨・寡照時には排水対策や病害虫防除を徹底するよう示しています。2026年9月の各地域の技術対策でも、採光、排水、過度な灌水・追肥の回避などが推奨されています。

具体的には、

  • 圃場やハウス周辺の排水を確保する

  • 曇天時は不要な遮光資材を開放する

  • 被覆資材の汚れを落とし、できるだけ採光する

  • 晴天時と同じ灌水量を続けない

  • 過湿時の多量な追肥や高ECを避ける

  • 施設では換気して過度な高湿度を避ける

  • 草勢に応じて整枝や摘果を行い、着果負担を調整する

といった管理が基本です。

栃木県の技術対策でも、長雨・日照不足時には「かん水や追肥を多量に行わない」「遮光資材を開放して採光する」ことなどが推奨されています。


環境を整えても、雨を止めたり太陽を出したりはできない

排水、換気、採光、灌水管理。

こうした環境側の対策が最優先です。

しかし実際の農業では、雨そのものを止めたり、曇天を晴天に変えたりすることはできません。

そこで、

 環境側からストレスを減らす
 +
 植物側から環境変化への適応を支える

という二つの視点があります。

植物は日射、酸素、温度、水分などの変化を受けると、代謝や根の形態、ホルモン、酸化還元状態などを変化させながら環境へ適応します。

特に過湿による低酸素条件では、植物体内のレドックス状態やROS/RNSシグナルが変化し、低酸素への適応応答に関与することが知られています。


長雨・過湿と「グルタチオン」

WAKUが着目しているのが、植物自身も体内に持っているグルタチオンです。

グルタチオンは、還元型(GSH)と酸化型(GSSG)の間を変化しながら、植物の酸化還元状態=レドックスの調節やROS制御などに関わっています。
過湿・低酸素条件でも、グルタチオンを含む抗酸化系が変化することが報告されています。
例えばゴマでは、水浸条件が長くなるにつれてGSHとGSSG量が増加する一方、GSH/GSSG比が低下し、細胞内のレドックス状態が変化したことが報告されています。
また、低酸素状態やその後の再酸素化ではROS生成やレドックス変化が起こり、グルタチオンを含む抗酸化系が関与します。

WAKUでは、こうした植物自身のレドックス制御や環境適応の仕組みの中で、グルタチオンが果たす役割に着目しています。


WAKUFULは「光を増やす資材」でも「排水を良くする資材」でもありません

WAKUFULは、日照時間を増やしたり、土壌の排水性そのものを改善したりする資材ではありません。

長雨・日照不足時には、まず排水、採光、換気、灌水などの基本管理が必要です。

そのうえでWAKUFULは、高温・低温・乾燥など変化する環境の中で、植物自身が状態を調整する仕組みに着目したバイオスティミュラントです。

植物の環境適応には、

ストレス応答
根の発達
光合成
養分獲得
酸化還元バランス

など、複数の生理機能が関係しています。

一つの症状だけを無理に変えるのではなく、植物全体が環境変化へ適応する仕組みを支える。

それがWAKUFULの基本的な考え方です。

WAKUFULについて詳しく見る


長雨では「一つの症状」だけを見ない

長雨では、

日照不足
過湿
低温
高湿度

など、複数の環境変化が同時に起こります。

そのため、

「光合成を上げればいい」
「根を伸ばせばいい」

と一つの症状だけを見るのではなく、

植物全体が今どのような環境に置かれているのか

を見ることが重要です。

まずは排水、採光、換気、水分管理などによって植物が受けるストレスを小さくする。

そのうえで、避けきれない環境変化に植物自身がどう適応するかを考える。

変化する天候の中でも安定した生産を目指すうえで、この二つの視点を組み合わせることが重要です。


よくある質問

雨が続くとなぜ野菜の生育が悪くなるのですか?

長雨では、日照不足による光合成低下と、過湿による根域の酸素不足が同時に起こることがあります。地上部では炭素同化が減り、地下部では根呼吸や養分獲得が制限されるため、植物全体の生育が不安定になりやすくなります。

土が湿っているのに植物が萎れるのはなぜですか?

過湿によって根域の酸素が不足すると、根の呼吸やエネルギー産生が制限され、根の正常な機能が低下します。その結果、水分が周囲にあっても十分に利用できず、地上部が萎れる場合があります。

曇天時は灌水を減らした方がよいですか?

一般に日照が少ない日は蒸散量も低下するため、晴天時と同じ灌水管理を続けると過湿になる可能性があります。ただし、適切な量は作物、培地、土壌、施設条件によって異なるため、根域の水分状態を確認しながら調整する必要があります。各地の技術対策でも、曇雨天時の多量な灌水を避けることが推奨されています。

長雨後に急に晴れた場合も注意が必要ですか?

注意が必要です。長雨・低日照に順応した植物が急に強い日射や高温を受けると、水分バランスが崩れることがあります。2026年秋も、長雨・日照不足後の急な天候回復に対する技術対策が各自治体から出されています。

WAKUFULを使えば日照不足や過湿を防げますか?

WAKUFULは日射量を増やしたり、圃場の排水性を改善したりする資材ではありません。まず排水、採光、換気、灌水などの基本対策が必要です。そのうえで、植物自身の環境適応に関わるグルタチオンに着目した補完的なアプローチとして位置づけています。


参考文献・情報

  • 農林水産省「野菜の生育状況及び価格見通し(令和8年10月)」
    2026年9月の長雨・日照不足による野菜への実際の影響。農林水産省

  • Zaman et al. / Adaptive responses of plants to light stress
    低光量による光合成・生育への影響を整理したレビュー。PubMed Central (PMC)

  • Pan et al. / Mechanisms of Waterlogging Tolerance in Plants
    過湿・低酸素と根呼吸、光合成、ROSなどを整理したレビュー。PubMed Central (PMC)

  • Wagner et al. / Redox and low-oxygen stress
    低酸素時のレドックス・ROSシグナルに関するレビュー。PubMed Central (PMC)

  • Hasanuzzaman et al. / Glutathione in plants
    グルタチオンと植物の環境ストレス応答を整理したレビュー。

この記事を書いた人

Yuta Nakamura

関連記事